| 第二章「はじめての戦い」 息切れをしながら、シムザは歩き続けていた。 歩き続けてもう三時間。早朝から出発したが、気づいたら、もう昼になっていた。 最初は最強の冒険者になるとこころを弾ませていたが、気づいたらもうバテバテだ。 「ちょっと・・・休憩・・・。」シムザは腰を下ろした。山を越えるまで、まだまだありそうだ。シムザは水筒を取り出した。シムザの渇いた喉が潤う。 「ああ・・・・・。」シムザは地面に寝そべった。 青空の光と鳥が飛び交う・・・。夢心地だ。 しかし、シムザはすぐに飛び起きた。すごい臭いがする・・・。 この臭いは・・・。今までなぜ気づかなかったのだろう。 汗のにおいで気づかなかったのか・・・・。 この生臭い臭い・・・。・・・。血だ!!!!! シムザは臭いのする方へ走っていく。 走った先には・・・・。やはり・・・。人が倒れていた。 幼い少年だ。血を流し倒れている。 「だ・・・大丈夫か?」シムザは駆け寄ったが、彼は息切れをして、うっすらと目を開けていた。 「何があった?」シムザは寝袋は取り出した。 「すぐ直すから!」・・・・。おかしい。少年の傷は治らない・・・・。 そうか・・・。もう手をくれなのか・・・。 少年はゆっくりと口を動かす。 「P・・・・PKに・・・。やられた。俺はもう・・・。駄目だ・・・。」 「PK?」おかしい。まだ出会いの草原まで超えていないのに人に襲われるなんて! 「誰にやられたんだ!」 「紅・・。紅蓮・・・。」 「紅蓮?」どこかで聞いたことがある名前・・・。 シムザは思い出した。もう三年前の話だ。旅立ちの町のはるか東にある町。 「自由と正義の町」あそこの東の森「テーロス」で起きた連続殺人事件。 砂漠へ冒険していたクルー24名が惨殺されたまま放置されていたおぞましい事件・・・。犯人は逃亡したが、被害者にあったクルーの一人が死ぬ前に、犯人の名前は証言した・・・。そいつは・・・。あの紅蓮・・・。 なぜ奴がここに???シムザの背筋はが凍り付いた。 このどこかに・・・。奴がいる・・・・。 「・・・。気・・・。気をつけて・・・。奴が・・・。」 幼い少年は息を引き取った。少年の死体が透明になって消えていく。 恐怖とともに怒りがシムザの心をおおった。 すると、後ろの方で人の気配がした。 「うわぁ!!!」シムザは大声をあげて後ろをふりかえって、後ずさる。 そこにいたのは若い女の人・・・。だが身なりは殺し屋のように、黒いマントをきている。シムザが震える口できいた。 「だれだ・・・おまえ・・・。」 若い女の人は、シムザの様子をしばらくうかがっていたが、やがてため息をつき 口をひらいた。 「私?私の名前はヘンリエッタ、それよりここにPKいなかった?」 「え・・・・。」 「んー・・・。」ヘンリエッタは頭を手で押さえ。目をつぶり黙り込んだ。 「・・・。遅かったか。・・・。この覇気は・・・。紅蓮か・・・。」 シムザは黙って見つめる。 「・・・。もうここにはいないか・・・。」 ヘンリエッタははぁとため息をつく。 「あの・・・・何やってるんですか?」とシムザ 「ん?何って覇気探りよ。」 「?」 「しらない?強い人は覇気があるの。覇気が強い人を私は探してる。」 「え・・・なんで?」 「当たり前じゃない。殺すためよ。」 「え・・・・。」シムザの顔が青ざめる。 「安心してよ、あんたの覇気は全然感じられない。初心者でしょ? 私、強い人じゃないと戦い楽しめないから。」 シムザは信じられない顔でヘンリエッタを見た。 殺しを楽しむ?ありえない・・・。なんておぞましい! 「えっと、紅蓮もいないみたいだし・・・。じゃあ、さよなら。」 ヘンリッタは軍車を取り出した。 その瞬間・・・・。二人の後ろから獣の声が聞こえた。 「ガルルル・・・。」 シムザにはガーゴイルとゴブリンが前からやってきた。 ヘンリエッタにはドラゴンが三体とケンタロスが二体やってきた。 「え・・・。」シムザの顔がまた青ざめた。 「死体の臭いをかぎつけたか・・・。」ヘンリエッタは血で渇いた一撃の剣を抜き取る。そして次の瞬間、彼女は消えケンタロスの首がはねとばされた。 グシュ!鈍い音と共に、ケンタロスの首が地面におちる。 なんて早さだ。 ヘンリエッタは宙を舞うとドラゴンにそのままつっこんだ。 「ガオオオオオ」ドラゴンが雄叫びをあげ、口に閃光をためる。 ドガーーーーーーン!大きく響きわたるとともに、ドラゴンの口からドラゴンブレスがヘンリエッタに激突する! ヘンリエッタは「く・・・。」と唇をかみしめ、地面にたたきつぶされるのを防ぐ。 ヘンリエッタは体勢を整えると、一撃の剣を握りしめ。 呪文を説いた。「杓死せよ」その言葉が最後だった。 彼女はかき消され、一瞬にドラゴンとケンタロスを細切れにした。 モンスターとはいえ、やりすぎた。グシャアーーーーー! あたりは血まみれだ。 シムザが呆然としていると、いきなり誰かに殴られた。 バキ!!!鈍い音とともに、シムザは倒れ込む。 あのガーゴイルだ。「く・・・。畜生・・・。」 ヘンリエッタは黙ってみている。助けてくれないのか? バギ!!!!次はゴブリンに殴られる。 「た・・・助けて・・・。」シムザの腹から血が流れた。 ヘンリエッタは、「そんな雑魚も倒せないなんて、冒険者失格よ。 助ける義理もない。私は戦いを楽しむ。あなたは恐がりなだけ。 自分で抜け出してみなさいよ。私はいくから。」 ヘンリエッタは軍車を広げ、空に舞い上がった。 「畜生・・・。」シムザは去っていく、軍車を見上げたが、また敵に視線を戻す。 (このままだと殺される・・・。)シムザは神風の剣を手に握りしめた。 (戦うしかない・・・・。にげちゃ駄目だ・・・。) 「うあああああ!」シムザは叫び声をあげてゴブリンに剣を振り上げた。 ブシャ!鈍い響きとともに、ゴブリンの腕が地面におちる。 「ウガアアアア!」ゴブリンはギロリとシムザをにらむと、 左手で石の斧を持ち上げ襲ってくる。 「うああ!」剣と斧がぶつかる。 シムザはすぐに剣を振り払うと、すぐさま剣をゴブリンのあたまに突き刺した。 ゴブリンの頭から血が吹き出る!(やった・・・) ほっとシムザがしたのもつかのま、大きな爪がシムザの肩を切り裂いた! 「うああああ!」シムザは悲鳴をあげる。 ガーゴイルがうれしそうに、ニヤリとわらって爪の血をなめた。 「うぐ・・・。」シムザの肩から血がふきでる。 真っ赤な血・・・。俺は死ぬのか・・・。 考えてみれば、俺はいつも恐怖にふしてる・・・。 強がっているだけ・・・・。戦いが怖くてしかたのない戦士なのか・・・。 ガーゴイルにまたなぐなれ、その反動にシムザは岩に激突した。 視界が真っ赤に染まる。そうか・・・・。俺は・・・。死ぬんだ。 第三章をつづく?
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