| 「スペルバンドヒーローズ」 作者 カマ 第一部「出会いの草原突撃編」 第一章「旅立ち」 この話ははるか昔に先のぼる。 ここは旅立ちの街、夢みる冒険にあこがれた人たちが集う街。 その街にやってきた少年シムザは胸を躍らせていた。 「ここが旅立ちの街かぁ!」シムザは目を丸くし、街を見て回った。 (まずはショップへ行って、武器を買わなきゃな) シムザはショップへと足を踏み入れる。 「いらっしゃい!何が欲しい?」五十歳くらいだろうか?おじさんがこちらにやってきた。「えっと武器と防具ください!」シムザがそういってポケットからサイフを取り出した。入っていたのは30ベル・・・。 「えっと30ベルでなにか買えるものありますか?」とまどいながらシムザは答える。 「30ベルかい・・?」家主は顔を曇らせた。 (やっぱり駄目か・・・、この街まで来るのに、たくさん金使っちゃったからな。) シムザは頭をさげる。 家主は落ち込んでいるシムザの様子を少し眺めると、やがて答えた。 「しかたねぇ・・・。こっちこい。」 家主に案内され、二人は古い物置に入っていった。 家主は答える。「俺も昔・・・。この街で冒険してたんだ。」 「え?」 「もう昔の話だ。俺は自分でいうのも何だが、強かった。」 シムザは黙って耳を傾ける。 「今はこの通り酒場を営んでるがな。」 「そうなんですか・・・。」 「おまえも見てると、昔の自分を思い出す。だからおまえに特別の剣をやる。」 「え・・・・?」 「ここでまってろ。」家主はシムザを残し、さらに奥へと入っていく。 「よいしょっと。」五分くらいで家主がほこりまみれになって戻ってきた。 長い筒をもっている。 「なんですかこれ?」シムザが筒を見回す。 「なかあけてみろ。」家主が筒をシムザにわたす。 シムザは受け取ると、そっと中をあけた。 中に入っているのは長剣が一つ、はいっていた。 「これは・・・・?」 「名前は神風の剣。攻撃力もワザもかなり強い。」 「本当?」 「ああ、だが今のお前では使いこなせないだろう。」 「え?」 「その剣は戦いを繰り返す事に強くなる。」 「すごい・・・。でもなんで俺に?」 家主は鼻で笑った。 「おまえは俺のこどもの時に似てる。絶対に偉業をこの世界で成し遂げるだろう。」 「・・・?」シムザはただ首をかしげる。 するといきなり、大きな振動が起こった。 ゴゴゴゴゴ・・・・・。 「なんだ?」シムザが拳をにぎる。 家主とシムザが外の様子をみると、たくさんの人の声が聞こえる。 大半の声は叫び声だ。 「なにがあった?」家主が逃げまとう一人の青年の肩をつかんだ。 青年ははっと、家主の腕を振り払った。 「はなせ!!!!」家主は話さない。 「この街になにがおきてる?」 青年はしかたなくこたえた。 「モンスターだ!あいつらがこの街を襲ってきた!出会いの草原の方角からきた! もう死人もでてる!」 「モンスターだと!なぜだ?なぜここにくる?」家主が頭をおおった。 青年は「あんたたちも逃げろ!殺されるぞ!」といって走っていってしまった。 「どうしたんだ?なにが起こってるんだ?」シムザはただ呆然とその場に立っていた。 「・・・・しかたぬ・・・。」家主は家からバスターソードを手にとった。 「おい、おまえの名前は?」 「え・・・・シムザ。」シムザはとっさに答える。 「いいか、シムザ。俺はモンスターを倒しに行く!おまえも逃げろ!」 「え・・・戦うの???」 「ああ、そうだ。じゃあな!」家主は走っていく。 「待って!あなたの名前は?」 家主は振り向いて、大声でいった。「イヨベ・トールだ!」 そしてまた走っていく。 「剣ありがとう!」そうシムザは叫んだが、もうイヨベはいなくなっていた。 (逃げないと・・・。)シムザはとっさに走り出した。 (なぜここにモンスターがくる???モンスターは出会いの草原からでれないんじゃないのか?)頭の中で次々と疑問がうかぶ。 「ガルルルル・・・・。」 シムザは足を止めた。 なんてことだ・・・。シムザの視界にいるのは、ケンタロスだ。 斧を光らせ、よだれを地面にボタボタと落としながら、ゆっくりこちらにやってきた。 (悔い殺してやるよ)ケンタロスの目がシムザに向かってそういっているようだ。 「ガアアアアアア!」大きな雄叫びとともに、斧がシムザに襲いかかる。 ガキン!金属と金属の音がぶつかる鈍い音が、シムザの耳に聞こえた。 ケンタロスの斧が太い剣と重なっている。誰かが守ってくれたらしい。 「大丈夫?」そこには竜騎士の少女が立っていた。 「ちょっとどいてて。」少女はシムザを後ろへ押すと、ケンタロスの斧を振り払った。 少女は剣をケンタロスに構えると、大声で呪文らしきものを唱えた。 「射殺せ、竜の牙よ!」 少女の呪文とともに、剣の先から大きな竜がでてきた。 その竜はそのままケンタロスに激突し、大きな爆音とともになぎ倒した。 ブシュ!気がついたらケンタロスの上半身が消し飛んでいた。 「・・・・・。」シムザはただ呆然と立っていた。 あんな少女がケンタロスを消し飛ばすなんて・・・・。 「大丈夫?」少女がもう一度、シムザに呼びかけた。 「あ・・・。うん。」シムザはやっとのことで腰を上げた。 「あなたは?」 「ん?わたし?わたしはハルヒ。よろしくね。」 「あ・・・うん。」 「じゃあわたし行くから。なんか出会いの草原からモンスターが出てきたんでしょ?」 「え・・・。あ、そんなこといってたかも・・・。」 シムザはただ棒読みで答えを返す。 ハルヒはため息をついていった。 「どうなってるのかしら?ここにモンスターがくるなんて・・・。 やっぱり、この世界がおかしくなってるのかな?」 「・・・?」シムザはただ首をかしげた。 「えっと〜。まあ、わたしさきいってる。奴らをくいとめなきゃ。じゃね。」 ハルヒはまた呪文をとなえるとさっと消えた。 「・・・・。」シムザは一瞬のできごとにただ呆然としていた。 「おい!きみ!」今度はシムザの左側から声が聞こえた。 「あなたは・・・。」さっきの逃げまとっていた青年だ。 「こっちだ。あの洞窟にかくれるんだよ。急ごう!」 青年に手をひっぱられ、シムザは洞窟に連れて行かれた。 洞窟にはすでにたくさんの人でうまっていた。 大半の人は幼いこどもやその母親の人たちだ。 シムザはその洞窟でゆっくりと考えた。 「俺は逃げてばっかり、イヨベさんや、あのハルヒさんは勇敢にこの街のために戦っている。俺にもなにかできればいいのに・・・。」 洞窟にはいって三時間だろうか? 洞窟にイヨベさんがやってきた。肩から血を流している。 「奴らをくい止めた。街にもどれるぞ。」 シムザたちは、再び街に戻った。 その次の日。 朝一番の光をあびて、シムザはあの高い山へと歩き出した。 (昨日、俺は全くやくにたてなかった。俺も強くなって、あの街を守ることができればいいのに・・・・。)強くないたい! あの高い山をこえれば、出会いの草原が広まっている。 シムザの神風の剣が黄金の様に輝く。 シムザの冒険が今ここに幕をあけた。 第二章へ続く?
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