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[7] 名前:ワニ:2008/11/3 01:47
  *第三章-歯車-


湖…?
辺りは樹木で鬱蒼としているのに、そこだけ不思議な程静かで碧い。
開けた視界に、綺麗で透き通った水が煌めく。
そこに、この世の物とは思えない程美しい女性が座り込んでいる。
余りに美しい光景に見惚れていると、女性が静かに立ち上がりこちらを振り返った。

(…い!…おいテリエ!…)

テリエ『ん、んんん…?』
聞き慣れた声で目が覚めた。
シメン『ったく…いつまで寝てんだよ、今日は出掛けるって、前に言ったろ?』
ベッド際にある窓に、シメンが肘をついている。
テリエ『あ、あぁ、うん』
起き上がると、目の前の時計が目に付く。
1時をさしている、シメンが怒るのも無理は無い。
急いで準備をしなくては。
床に放られているくしゃくしゃになったベストを羽織ると、
玄関まで歩き、少し大振りなブーツに足を突っ込む。
テリエ『よしッ!』
ドアに手をかけるテリエに、テーブルの上を指してシメンが言う。
シメン『それ、忘れたら行く意味ねーだろ?』
すっかり忘れていた、テーブルの上に置かれた紙幣を握り締めると再びドアを開ける。

あの不思議な男に出会ってから3日が経った。
今日は彼から預かった紙幣で必要な物を揃えに行くのだ。

テリエ『ごめんごめんっ!』
ブーツのつま先で地面をトントンと突きながらテリエが出てきた。
シメンは待ちくたびれた様子で、腕を組みながら壁に寄り掛かっている。
シメン『ったくー、急いで行くぞ』
2人はすぐにあの店に向って走り出した。

(ガチャッ、チャリーン♪)

ヨナタン(店員)『いらっしゃ〜い』
緑色の長髪。いかにも面倒くさそうに仕事をしている…20歳くらいだろうか。
その男を見つけると、カウンターまで駆け寄る。
シメン『あの、これで買える物って…』
そう言いながら、紙幣を一枚取り出す。
ヨナタン(店員)『うぅ〜ん…』
相変わらずの面倒くさそうな表情で、それを見つめている。
少し考え、言った。
ヨナタン(店員)『そこの胸当てと、あと…そこの短剣くらいかなぁ』
テリエの後ろを指して言う。
少し錆びているが、十分使えそうだ。
シメン『2つずつ下さい』
すぐに答えると、テリエとシメンは1枚ずつ紙幣を差し出した。
ヨナタン(店員)『はぁいよ』
慣れた手つきでそれらを紐で縛っている。
縛り終わると2人の肩に掛けた。
(ガチャッ、チャリーン♪)
ヨナタン(店員)『まいどぉ〜』
抜けた声に押されて、店を出る。
肩の紐を掛けなおし、歩き出そうとした時だ。


『よっ!』

どこかで聞いた声だ。
振り返るとハーコンセンが立っていた。
テリエが重そうに担いでいる荷物を見て言った。
ハーコンセン『やーっとやる気んなったみたいだなァ』
実に嬉しそうだ。
その表情に少し戸惑い、テリエが答える。
テリエ『これ、買ったは良いけど…この後はどうしたら良いか…』
困惑するテリエの肩を叩いて言った。
ハーコンセン『まぁついてこいよっ』
まるで、用意されていたかのような流れだ。
しかし、ついて行く他の選択肢は無い。
再び紐を掛けなおし、彼の後につく。

細く入り組んだ裏道を暫く歩くと、
「BURTON」と書かれた小さな看板と、地下へ続く階段が現れた。
その前で止まると、更にその狭い階段を下っていく。
そして突き当りにある黒いドアを勢いよく開けた。

???『誰だぁ?』
図太い声にビクっとする。
ハーコンセン『俺だよ、買出しに行っていた』
肩から荷物を下ろしながら、ハーコンセンが答える。
???『ハーコンセンか。ご苦労さん』
ハーコンセン『いえいえ。それと、ついでに』
テリエとシメンをその男の前に突き出すと、続けた。
ハーコンセン『入団希望者を2名連れてきた』
顔を上げると男と目が合った、ゴールドの綺麗な目をしていて、
銀色の短髪に、ひげも少し生えている。
皮張りの大きな椅子に座ったまま、男は喋りだした。
セス『俺はセスだ。お前ら、名前は』
ハーコンセン『その赤い髪のチビがテリエ、青いのがシメンだ』
答えようとしたが、ハーコンセンの方が早かった。
名前に然程興味は無かったのか、聞き流すかのように続けた。
セス『はん、よろしくな。さっそくだが「BURTON」について説明しておく』
男は葉巻にマッチで火をつけると、話し出した。

この街には、同じ志を持った者が集うギルドなる集団が存在する。
目的はその集団によって個々別々で、
宗教染みたものから正義や悪を掲げるものまであり、規模もピンキリだ。
その総数は、非公認の集団を含めれば20近くある、うちもその1つだ。
そして我々の目的は、この街の住民の保護、平たく言えば用心棒だ。
一言に言ってもそれは様々で、
報酬を頂いて護衛に出向く事もあれば、モンスターの退治も請け負う。
時には人殺しの代行の依頼もある。
まぁ、簡単に言えば何でも屋みたいなもんだ。

そこまで言い終えると立ち上がり、続けた。
セス『だが甘いもんじゃねぇ』
彼の腕には深い傷が目立つ、その「用心棒」とやらで負った傷だろうか。
セス『この1年間で3人仲間が死んでんだ、ガキに務まるかどうか…』
男が言いかけると、テリエが初めて口を開いた。
テリエ『でも俺達、やってみたいんだ…』
続けてシメンを言う。
シメン『怖かったけど、今は違う』
それを聞くと、セスは声を上げて笑い、満足そうに言った。
セス『ハーコンセンが引き抜いてきただけはあるな!』
更に2人を見おろし、一呼吸おいて続けた。
セス『奥だ、荷物は置いていけ!』

2人は、腰に長剣を携えた屈強なその男の後を追い、更にアジトの奥へ入っていく。



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